研究成果

江戸時代の福岡藩における社会的格差と栄養状態:古病理学と考古学の融合研究

総合研究博物館米元史織 准教授 

目的

本研究では、福岡県内出土の古人骨を対象として、栄養・健康状態から江戸時代の経済的格差を明らかにするため、健康・栄養状態の指標であるハリス線、身長、骨膜炎の研究を行った。これにより江戸市中の研究のみから語られてきた健康状態の劣悪さを地方都市の点から検証し、江戸時代の格差が健康状態にどのような影響を与えたかを検討した。

続きを読む


対象

大野城市内の3つの遺跡出土人骨を対象とした検討を行い、次いで箱崎遺跡出土人骨の検討を行った。箱崎遺跡については共同研究者を中心に墓地分析や副葬品の検討からその内的な差異の再構築を行った。

結果と考察

ハリス線の出現頻度は農民の中でも庄屋に属する人々が低く、箱崎遺跡の人々が最も高かった(表)。箱崎遺跡については副葬品の考古学的分析を行った結果、柄鏡や錫杖などといった特殊な副葬品も確認することができ、当該遺跡に埋葬された人々は、他の墓地遺跡と比較して特異な職能を持つ個体が存在したことが明らかになった。しかし、栄養状態は大野城市内遺跡と比較すると悪く、一般農民層よりも生活状態は良くないことが推測された。古人骨の調査によって同じ非都市部の百姓内にもハリス線の出現頻度に差が生じており、このことから階層社会の進展とともに百姓層も階層分化がすすみ、上位層化した一部農民を除く大多数の農民層の貧窮化の影響を表している可能性を明らかにした。

今後の展望 

ハリス線の観察によって得られた格差をさらに検討するため、筑紫野市原田遺跡など今回の研究計画に含めていなかった福岡県内の江戸時代遺跡出土人骨のCTによる観察を行う。また、栄養・健康状態の差は食べていたものに起因する可能性が高く、歯石を用いた腔内細菌叢の研究を共同研究として進めている。

 

 

融合分野

自然人類学、古病理学、考古学

 

研究キーワード

江戸時代、ハリス線、健康状態、格差

関連する研究者情報
総合研究博物館 准教授 米元 史織
比較社会文化研究院 准教授 田尻 義了
人文科学研究院 助教 谷 直子
関連リンク
箱崎遺跡出土人骨
ハリス線の出現頻度比較
CT機器
ハリス線(横に伸びるライン)

Deprecated: Directive 'allow_url_include' is deprecated in Unknown on line 0