人間環境学研究院/木下寛子 准教授
研究内容
本研究は、「移動」が人生における希望にまで深く浸食する現代の都市生活の状況を理解することを通じて、都市と人の関係性の理解を目指す試みです。研究期間は、九州大学のキャンパス移転を含め、私たちの身近に起きた地域・都市・人に起こる出来事とそこに生じる経験を、できるだけ生活者の「経験に近い言葉」に着目して理解する基礎的な段階にあたります。
本課題では、研究の遂行に留まらず、「人間と環境の関係性」の探求、特に「都市と移動」に関わる研究者の交流を促す場の醸成も課題としました。
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融合分野
都市における「移動」に関連する調査や実践に取り組んできた学内外の多分野の研究者(環境心理学、都市設計学、建築計画学、社会学、教科教育学、博物館教育学等)の研究内容を踏まえながら議論を進めていくことを課題にしました。メンバーは、人間環境学府萌芽的学際研究助成2017年度、人社系協働研究・教育コモンズのシンポジウム2020~2021年度等の学際的な企画や議論の場をきっかけとしてご縁ができたメンバーでした。
研究展開
研究期間は、「九州大学の移転」をはじめとする「移動」をめぐって、現時点でしか確認できないような局面が、都市福岡市の生活環境に多数生じた時期になり、その調査を最優先として課題遂行を進めました。代表者の調査先である学校現場では、大学移転の影響を示唆するような出来事に立ち会ったり、話を聞いたりする機会も生じ、それらの整理を行っている最中です。また人社系協働研究・教育コモンズを開催プラットフォームとして、学内外の研究者の研究交流の場を開きました。具体的には人々の都市への移動が加速した1920年代以降の100年を追う学術書 石井宏典著『都市で故郷を編む』東大出版会2023年のブックラウンチを、著者を迎えて開催しました。人社系領域、特にフィールド研究にとって、書籍の刊行は研究上きわめて大事な意味をもちます。本企画では学術出版社の編集者の参加も得て、人社系の知における書籍の意味を発信する場にもなりました。
今後の展望
●研究期間には中途で終わった議論を続け、各調査の途上で見えてきた都市における移動の意味をより明確にしていきます。
●九州大学を中心として近隣の研究者、および関連諸機関と共に生活環境としての都市をめぐって議論の場の醸成を目指します。
●人社系コモンズ等の学際交流の場では、対話や議論とともに、人社系の知の重要な成果である書籍に関する発信を積極的に行っていくように努めます。
融合分野
環境心理学、都市設計学、社会学、博物館教育学、建築計画学、教科教育学
研究キーワード
移動、人間-環境系、都市、地域、キャンパス移転