Nagatsu Yuichiro, Assistant Professor, Faculty of Design
研究内容・成果
本研究は、未来の農村が芸術文化・生活文化を通じて多様で包摂的な社会になるためのモデルを形成することを目指した。具体的には、農村に創造的な手法で関わる人を取り巻くエコシステムや創造的な工夫を明らかにすることと、これを「半農半アート」として概念化し、そのライフスタイルの効果を検討することを目指してきた。
まず、これまでフィールドとしてきた福岡県八女市黒木町に加えて、伝統芸能の継承をまちぐるみで行う宮崎県高千穂町やその周辺地域、市の農業政策および文化政策としてアートと農業が交わる取り組みを複数実践している京都府亀岡市などに対してインタビュー調査を行い、それぞれの活動が行われる仕組みにどのようなものがあるのかを可視化することを目指し分析を試みてきた。
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そして、本助成事業を契機として農学研究院との協働を開始することができ、これまで研究チームが持っていた緑地保全学、文化政策、社会教育学の知見に、環境経済学、国際連携教育の視点が加わったことで、芸術と農との関わり方についての理論構築の端緒を得ることができた。またその成果は臨時授業科目として学生とも共有することができ、さらには2度のフォーラムで社会に公表し、広くその成果に注目が集まった。
また、研究期間後となるが、この研究成果が一般書籍として出版されることが決定している(2024年度内を予定)。生態系サービスとしての文化のあり方や、伝統芸能の継承が地域やアーティストに与える影響、農村内での横断的コミュニティの構築など、これまで芸術工学研究院と農学研究院で行ってきた、アートと農に関する議論のトピックの多くをカバーする形で、一般書として公表される見込みである。
今後の展望
これまでの文化政策や農業政策の分野ではあまり述べられてこなかった、農村における文化の役割を、横断的知見により検証することができた。ただ、その議論は端緒についたばかりであり、今後さらなる研究の発展が求められる。
今後も、本研究を通じて培ったネットワークを活かしながら、教育や研究にその成果をつなげていきたい。具体的には、農学研究院と芸術工学研究院との連携をさらに深めるとともに、共同での研究資金獲得や国際的な展開に向けた議論を進めていきたい。
融合分野
文化政策、社会教育学、緑地保全学、環境経済学、国際教育
研究キーワード
アート×農、文化的サービス、創造農村