The Kyushu University Museum, Assistant Professor, Masahiro Fukunaga
研究内容・成果
本研究の目的は、九州大学箱崎キャンパス跡地内遺跡(以下、箱崎CP遺跡と呼称)で新たに見つかった、近世墓地の性格究明である。考古学と形質人類学、最先端デジタル技術を用いた分析、理化学的分析による学際融合研究を実施することで、墓地として利用された期間や、埋葬されていた人々の階級や身分、生活様式などの解明を目指した。本研究で明らかになった点は以下の通りである。
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①埋葬施設である甕棺や副葬品、人骨の埋葬様式などを分析した結果、箱崎CP遺跡では江戸時代から九州帝国大学創建までの間、墓地として利用されていたことが明らかになった。また、分析の結果、当該遺跡では鎌倉時代や室町時代、戦国時代の墓や火葬場跡も確認することができ、中世~近世にかけての葬墓制のあり方やその変遷を明らかにすることができた。
②副葬品の考古学的分析を行った結果、柄鏡や錫杖などといった特殊な副葬品も確認することができ、当該遺跡に埋葬された人々は、上流階級に属さないにしても、経済的に比較的余裕がある人々であったことが推察される。
③古人骨から身体活動を再構築する方法の1つである筋骨格ストレスマーカーを分析した結果、江戸時代の武士層や近世筑紫野の百姓層の筋骨格ストレスマーカーとは傾向が異なり、男女ともに筋発達・活動負荷が強い集団であることがわかった。
④埋葬人骨の炭素窒素安定同位体測定を行い、埋葬された人々の当時の食性を調べたところ、草食動物やC3植物(イネ、コムギ、ダイズなど)などの陸産物を中心に摂取しつつ、海産物もある程度摂取していた可能性が浮上した。
地方自治体によっては、近世以降は埋蔵文化財保護の対象外とされ、開発行為によって遺跡が破壊されることも珍しくない。そのため、近世における葬墓制については、先史時代などに比べて考古学的な調査研究が十分行えておらず、いまだ不明瞭な点が多かった。本研究において得ることができた研究諸成果は、当該地域の近世墓地の様相を復元する新たなデータを提供することはもちろんのこと、今後の近世墓地をテーマとした調査研究のモデルケースになり得ると考えられる。
今後の展望
本研究で明らかになった箱崎CP遺跡での成果を相対化するため、隣接する箱崎遺跡や博多遺跡群で見つかっている近世墓地との比較研究を進めたい。特に博多遺跡群は中近世において日本有数の一大都市遺跡であり、箱崎CP遺跡で埋葬された人々の階級や身分、生活様式とは、また異なった様相が認められる可能性が高い。<都市―都市外縁>における葬墓制比較研究のさらなる深化に貢献できよう。
融合分野
・考古学 ・形質人類学
研究キーワード
・九州大学箱崎キャンパス跡地遺跡 ・近世 ・墓地 ・葬墓制
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